2017年11月12日
約100年前のカーバイドランプをメンテナンスしてみた
おはこんばんにちわ。
Daisukeです。 (  ̄´▽` ̄)
先日お話した約100年前のカーバイドランプ。
そのままではガス漏れや火事になる危険性もあるため、全体的にお手入れしてみました。
まずは各部にこびりついているカーバイドの成れの果てである石灰を溶かして落します。
後の「使ってみた編」でお話しますが、カーバイド(炭化カルシウム)は水と反応してアセチレンガスを出し切ると消石灰になります。
(  ̄´▽` ̄) 小中学校の校庭にライン引くあの粉(厳密にはちょっと違うけど)
ロアタンクの内側全体やアッパータンクのガスの通り道等、消石灰が固まり石になってしまっていますので、まずはこれを溶かし出します。
クエン酸(100円均一の物でもOK)をぬるま湯で溶かしたら、カーバイドランプの分解できる部分は全部分解して、クエン酸水溶液に漬け込みます。
漬けた瞬間からしゅわしゅわ炭酸ガスを発しながら石灰が溶け出していくのが見て取れます。
そのまま放置してもいいのですが、しつこくこびり付いた石灰はなかなか溶けきってくれませんので、ナイロンブラシなどでブラッシングしても効果的です。
私はブラッシングだとまだるっこしいので、より力をこめて擦るために帆布生地をカードサイズにカットしたもので擦り上げました。
ある程度石灰が落ちたら約24時間放置。
翌日には様々な汚れが溶け出して、クエン酸水溶液は真っ黒です。
各パーツをクエン酸水溶液から取り出して水洗いし、水分を拭き取ったのがこちら。
クエン酸で取れるのは石灰だけ(のはず)です。
真鍮表面の酸化膜までは取れませんので、古めかしい風合いを残したいのであれば磨きは必要ありませんが、真鍮らしい輝きを表に出したいので私はあえて磨きます。
磨きには金属磨きの定番「ピカール」でOKです。
厚手の帆布に適量のピカールを付けて、一つずつパーツを丁寧に磨いていくとどんなに錆だらけの真鍮でも、本来の輝きが蘇ります。
外装磨きの工程はランプとして実用する分には必要ないですが、リフレクターの内側だけは磨いた方がランプとしての効果が上がりますので気合入れて磨くならここでしょう。
なお、ピカールは荒めのコンパウンドですので、傷消しまではできません。
完璧に鏡面仕上げにしたいのであれば別の細目コンパウンドが必要になります。
さて、ここまでは外観のメンテナンスでしたがここからはランプそのものの機能部分をお手入れしていきます。
まずは火口(ほくち)。
たき火のスタートで使うティンダーの事も日本語にすると「火口」になりますが、こちらの火口は横文字にするならファイヤーノズルかな?
アセチレンガスの噴射量を絞って安定した炎にする大事なパーツです。
ランプ本体との取り付け部はテーパー状になっていて、差し込んでいるだけなので、簡単に取れます。
簡単に取れる小さなパーツなので紛失には注意。
簡単に取れる構造なのは、このパーツが安全弁の役割を果たしているからで、なんらかの理由でロアタンク内のガス圧が高くなり過ぎた場合に、このパーツがガス圧によって押し出されて外れることでガス圧によるランプの破損を未然に回避するためなんだそうです。
(  ̄´Д` ̄) 古物市場の出品物にはここが紛失したままのがあります。火口単品でも出品されているので入手はできますが、適合するかどうかは・・・
火口を手に取ってよくよく見てみると、本来穴があるはずの部分が石灰で埋まってしまっていました。
このまま使用しようものなら、ガス圧で火口が吹き飛ぶだけなので、ガスの通行口を通してあげます。
既に24時間クエン酸水溶液に漬けた後でしたので、石のようになっていた石灰は粘土状にまで軟化してました。
あとは粘土状になった石灰のカスを取り除いてあげるだけです。
穴は1mmにも満たないごく小さなものです。
方法は色々あるようですが、私の場合はマチ針と粘土細工等で使用する極細の針金で石灰カスをこそぎ取りました。
次にアッパータンクとロアタンクの繋ぎ目のパッキンを作成します。
これも非常に大事なパーツで、このパーツのコンディションが不十分だとガス漏れをおこし高確率でランプ自体が火達磨になります。
(  ̄´▽` ̄;) とても引火性の高いガスなので、ガス漏れ注意
メンテナンス済みのカーバンドランプを購入しない限り、このパッキンは交換した方がいいと思います。
中古品はまず経年劣化で硬化して密閉力はなくなってますので使い物になりません。
この手のパッキンはホームセンターの水道関連コーナーで入手できます。
現物合わせで元々ある古いパッキンから内径・外径・厚みを計測し、近しいリングがあればそれでOKですし、無い場合でもパッキン自作シートが同コーナーに税込200円くらいでありますので、それで作ってもいいですね。
(  ̄´▽` ̄) 自作するなら100円均一のハンコマットを加工してもいいそうですよ?緑色さえ気にしなければ・・・
私は3mm厚のパッキン自作シートを用いました。
コンパスカッターで外円→内円の順で切り出します。
使うだけならこのままでもいいですが、元々ついていたパッキンの形状に近づけるためにレザー用のへり落しを使ってパッキンの角を削ります。
左が古いパッキン。右が今回作ったパッキン。
ランプに取り付けてみると綺麗に密閉してくれているのが分かります。
不安なようでしたらロアタンクに水を入れて傾倒して漏れを確かめるのもいいと思います。
最後に点火ホイールの修正です。
まあ、これは無くてもいいんですけど本来の性能に近づけるという意味ではやはり直しておきたいところ。
ジッポーライターをお手入れされた事がある方は分かると思いますが、鋼でできたホイールと石(フリント)が擦れることで火花を出す仕組み。
石(フリント)は使えば使うほど削れて無くなっていきますので、ある程度使用したら交換が必要になってきます。
私が購入したランプには削れたのか前オーナーが紛失したのか、石が入っていませんでした。
テンショナースプリング(石を常に同じ位置に保持するバネ)は入ってましたので、ジッポー製のフリントを入れるだけで火花が出るようになりました。
点火ホイールから火口まではそれなりに距離があり、ライターのように普通に擦っただけでは着火できません。
ホイールを実用するにはコツがあるようで、ガスを出したらリフレクターを手で覆って掌の中にガスを充満させたところで、掌を素早くどかしざまにホイールを擦ることで充満させたガスに引火させると着火できるようです。
お恥ずかしながら私はどうもこれのコツがつかめず30回やって1回しか成功せず。
私が使う際には素直にライターで着火することにします。
(  ̄´▽` ̄;) 使えるようにはなったってことで、これで良しとします
さて、いよいよ点火となるわけですが
使用レビューは次回「使ってみた編」でお話いたします。
ではまた (  ̄´▽` ̄)ノ
むか〜し、見たコトがありましたが、味わいのある物ですよね。
それにしても、昔の物作りの品質は、大事に使うと凄いですね。

カーバイドランプ。
私は実用されているシーンを見たことが無かったのですが、これの存在を知ってから、とても興味がわいてじっくり調べまわりました。
それ自体に歴史を感じるのはもちろんですが、非常に単純な化学変化を、非常に単純な機構の道具でランプにしてしまうということ。
そして、何より「絶滅しかけている」という事実が、へそ曲がりな私にはぴったりだったようです。
このブログから3日間、カーバイドランプについての記事が続きますが、ちょっとでもご興味ございましたらご一読いただければ幸いです。

古い物をメンテナンスして使えるように出来るのって、凄い事だと思います。
自分はそういう知識が無いから、偶然見つけた古い物もなかなか購入できないです(^_^;)
使用した際の記事。楽しみにさせて頂きます。

ひとつ前の記事も構造や歴史、勉強になりました
つまんで持っている写真で小洒落たミルクポットかと思った知識のないいたちです(ヽ´ω`)
しっかしさすが百年近くの歴史を感じる汚れ!Σ(・ω・;)
火口の穴の詰まり取りはキャブレターの清掃みたいですね
そんな積み重なった汚れもピカピカ、さすがピカールです(*>艸<)
どんな風に点灯するのかなとワクワク読み進めたら、それはまた次回とは焦らしますね(笑
続きも楽しみにしております

コメントありがとうございます。
知人に連れられ、一昨年初めて骨董市を覗いてからというもの、古き良き道具に惹かれるようになりました。
もちろんそのまま使うことができない道具達が殆どです。(コンディションの良い古物は高価ですので手が出ない)
金属系のメンテナンス術はバイク屋に勤務していた時に教わったことが役に立っています。
戦後直後の物が無い時代を生き、多少の故障は必ず直して使うという信条の父の背を見て育ってきたこともありますし、ありがたいことに私には古道具を使う下地があるのかもしれませんね。
いたちさん>
そう!さすがピカール!
本当に思います。
安価なのに効果抜群。
灯油臭がしますので、ちょっと臭いですけど (  ̄´ω` ̄;)
次のブログ記事ででカーバイドランプを点灯しますが、カーバイドランプの本当の色合いとか暖かさとか、なかなか文字や写真では伝えることが難しい。
文章力や写真の腕もピカールみたいに簡単に磨けるケミカルがあればいいのになぁ。
